未来に進む

未来に進む
港の見える小さな町で、舞花は最後の冬を過ごしていた。高校生活も残すところ、あと数週間。 駅のホームで電車を待つ時間、放課後の空気の匂い、制服のポケットに残る寒さ―すべてが終わりに向かっているような気がして、胸が少し痛む。 舞花には、言えなかった想いがあった。 美玖、幼稚園の頃からの幼馴染。声がよく通って、誰にでも優しくて、けれどどこか遠くを見ているような目をしていた。最初はただの幼馴染だった。でも、気づいた時にはただの“友達”“親友”ではなくなっていた。 美玖のよく響く声が、長い茶色っぽい髪が。制服のリボンを解く仕草が、頭のどこかにこびりついている。舞花の心は、それからずっと美玖ので満ちていた。  おかしいってわかっていたからこそ、関係が崩れてしまうことが怖かったからこそ。  想いは伝えられないまま、季節は巡っていった。
叶夢 衣緒。/海月様の猫
叶夢 衣緒。/海月様の猫
自己満です。 少し投稿頻度落ちてます。 ※フォロバ目的のフォローはしません。フォロバも期待できないと思います。 2023年 2月27日start 3月3日初投稿