母の手
母の手は冷たかった。
思えば母の座っている姿を見たことがなかった。いつも朝早くから台所に立ち、包丁とまな板と音を奏でていたり、鍋とにらめっこしたりしていた。
天気がよければ畑や田んぼの世話をして、雨なら繕いものや家の掃除など。母はまさしくこまねずみのように何かしら動いていた。
子供の頃からそんな姿を見ていた私は、ある日母に趣味はなにかと聞いてみたことがあった。
そのとき草むしりをしていた母は、手を止め地面から目線を外し数秒考えた。そして、草むしりかなと答えて、また黙々と草むしりに集中した。
私は丸まったその背中を見ながら悲しくなった。母はいつも家族のために働いてばかりで、自分の好きなことはないのかしないのか。
母の手は赤紫蘇で染まったり、あかぎれで切れていたりしていた。爪は土のような汚れが詰まっていた。それでも私は母の手が好きだった。母は冷え性だから触れるとひんやりとするのだが、それも含めて好きだった。
最後に触れる母の手。動かなくなった重なった両手をなぞる。
細く、骨張っていて、いつものように冷たかった。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2026/10/29 7:40
はるきち
いいねやコメント失礼しますm(_ _)m
心身健康な時だと出来るのですが、最近読める時と読めない時の差が激しくて…_(:3 」∠)_
こんなやつですが、よろしくお願いいたします