記憶屋・灯籠
「ええ、もちろん」
少し怪しげな雰囲気を醸す彼の放った言葉を、私は未だに信じられなかった。阿呆らしいなとさえ思う。噂を聞いて、嘘であってもいいからと思い、望んでいた答えをもらえたけれど、それでもやっぱり信じることができない。
「本当に、本当のことなのですか」
「−−信じてもらえないことは重々承知の上です。死は、いつだって突然です。思い出を残すことさえ許されないくらいに、短い一生の方もいらっしゃったでしょう。そのような方達のための、商売なのです」
彼は終始声の調子を変えなかった。それがかえって、私を不安にさせる。本当は騙されているのではないか。その気持ちだけが膨れ上がっている。
やっぱり諦めて、出て行こう。そう思い、席を立とうとした矢先、再び店の扉のカウベルが鳴り響いた。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2023/2/12 1:44
矢来灯夜
初めまして、矢来灯夜(やらいとうや)と言います。小説、というよりも、何かを書くのが好きなので、アプリをインストールさせてもらいました。どうか、よろしくお願いします。