人生60年時代
もし、人間の寿命が60年と決まっていたとしたら
例外なく、60年で死ぬとするならば、あなたは何を幸せとして生きていきますか
その幸せはあなたにとっての幸せと言い切れるんでしょうか
「私ね、将来お嫁さんになる。子供は2人いてね、イケメンのダンナさんと、ママとパパで暮らすの」
そう言った私の頭を撫でながら母は、「賢いね、楓は親孝行者だわ」と柔らかく笑ったのを覚えている。窓からアネモネがみえたので春頃のことだっただろうか。
何で急にこんなこと思い出したんだろう。アラームを止めながらぼんやりと考える。ああきっと昨日のことのせいだ。夏休みの課題として出された作文、テーマは「将来について」。書いたはいいが、私は提出を躊躇っていた。笹原はその作文を勝手に取り上げたかと思えば、大声で読み上げ、私はクラスの笑い者にされたのだ。悲しさと恥ずかしさと怒りが込み上げ、家に帰ってすぐ作文は破り捨てたのだった。
「昔はそんなことする奴じゃなかったのにな」
ひとりごちながら着替える。朝といえどもまだまだ暑い。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/3/26 13:16
最終編集日時: 2025/3/30 3:47
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
雁木ひとみ
全てフィクションです