二十九時

街路樹の隙間を縫って漏れる朝日に、いたずらに目を焼かれるのがどうも好きだった。路地裏の一角に坐して生活していると、籠った空気が悪さをする。享楽の苦い香りと、現実と乖離していくような焦燥とが徒党を組んで襲ってくる。その類は日の光に弱い。太陽が昇る間に僕は救われるのだった。 街路樹を挟んだ向こう側には、僕の知らない世界がある。飛行機や車がてんでばらばらになって、あちこちへと駆け抜けていく。洞窟を抜け、雲の上に消え、最終的には地平線を飛び越えてこの街を離れる。動物だって例に漏れない。逞しい四肢があれば、誰だって旅ができる。 僕には脚がない。それは想像にかたくない事実だった。 脚を失う痛みを、僕は鮮明に覚えているわけじゃないが、脚がゆっくりと繊維に従って解けていくのを黙って見守っていた。それは地面の一部になった。不良品というのはこれだから嫌いだ。 世界はどうにも、僕らに良い顔をしてくれない。 バッテリーが、街に合わせて失われていく。 日が沈む。あちこちに散っていった光沢の欠片が、木々の方へと戻って、太陽へと帰属していく。それを眺めている間、どうにも僕は泣きたくなるのだった。
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面白い物を読ませてくれる人が好きです。 noteにもいます。 11.4 ~