IN JAPAN 4

 地下鉄で左京まで行き、下鴨神社前にある加茂みたらし茶屋で御手洗団子を食べた。焦がし醤油のような甘い味が団子に絡み付いて美味い。 「私はサムエル君に随分振り廻された側だと思うよ。ピスキス君とサムエル君はどんな関係なの?」 「知人に過ぎん! 何も知らないし知りたくもないのだ! ただ失明させてしまったのは申し訳ないと思う」彼はしょんぼりとした。 「何故失明させたの?」  博戸が問い詰めるように身を乗り出すと、ピスキスは魚眉を垂らして「私もそれが思い出せない。潰したことは覚えているのだが!」と残念そうにした。 「変だねえ」と、博戸は気の毒そうにする。それから彼らは茶屋を出て歩いた。店に寄ったり、殆ど衣の豚カツを食べたり、資料を見つつ和歌山の蜜柑を食った。そうして日暮れ頃には小さな社に手を合わせて川沿いを歩いた。  下鴨神社の辺りには高級住宅街の雅な風景がある。東京のような派手な摩天楼や塔はないが、夜になると琥珀色の温かい光が障子越しに溢れて美しいのだ。彼らは一応、情報を纏めつつ考えようとぶらぶら街を歩いた。青い雑木林の底から螽斯の声が聞こえる。磨いたばかりの鏡のような月が道を照らしていた。 「うーん。サムエルの目的が分からん限り無理だな!」  串を牙に挟んだままもごもごと言う。隣で博戸は八橋をぼりぼり食べつつ肯定の相槌を打った。土産屋でここまで食べ物を買ったのは初めてかもしれない。京都の、香ばしく素朴な味がむしろ舌に沁みた。 「まあ飯を食わないとお前も駄目だろう! 京都は味が薄いからな、居酒屋はどうだ? 今の風貌には似合うが元の姿には似合わんな! うーん、バーに行くか。その後、コンビニでお握りを買おう! 外でサムエルに電話しておくから先に入っていてくれたまえ!」
愛染明王
愛染明王
科学部の逸材