先輩の言い訳 その5

「生活空間について考えてみよう」  とある日の夕方。  研究室には、僕と先輩しかいない。  この状況は、少しばかり珍しい。  この時間になると、なんだかで書類仕事をしている研究者も多いものなのだが。  ちなみに僕と先輩は、その書類仕事も終えて、あとは帰るだけだ。  ……そのはずだったのだが、先輩の講義が始まったのだ。 「生活空間。意味としては、日常の生活を送るために必要な環境の範囲……、と言ったところだろう。これは、わざわざ言うことでもなく、漢字を見るだけでも分かるかもしれないな」  先輩が、研究室にあるホワイトボードへ板書していく。先輩の使っているマーカーのインクがきれ始めているのか、少しだけ文字がかすれていた。 「時に君。江戸時代の東京……、言うなれば江戸の人口は知っているか?」
きと
きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。