ろくがつ、

ろくがつ、
六月の雨は嫌いだった。 制服の裾は濡れるし、髪はまとまらないし、空はずっと機嫌が悪そうだから。 だけど高校二年の梅雨だけは少し違った。 校舎裏の紫陽花が毎日少しずつ色を変えていったからだ。 青だった花が紫になり紫だった花がどこか赤みを帯びる。 まるで心そのものみたいだ、と彼は言った。 「知ってる? 紫陽花の花言葉」 放課後の渡り廊下。 雨を眺めながら、私は隣の席の春人に聞かれた。 「移り気、とか?」
叶夢 衣緒。/海月様の猫
叶夢 衣緒。/海月様の猫
綺麗事が救いにならない夜の話。 正しさに置いていかれた感情と、 救われなかった青春の残骸。 優しい言葉ほど、いちばん痛い。 2023年 2月27日start 3月3日初投稿