桜の咲かない春
「くっそーーーおりゃあああああああ!」夕聖はそう叫びながらほぼ全力ダッシュで俺を置いて走っていった。
「お前それ絶対後半ばてるぞ!」と注意したもののもう夕聖は豆粒くらいちっちゃくなっていたので、たぶん聞こえていないのだろう。俺も夕聖に引っ張られて、少しペースをあげて走った。
体育教官室で練習に参加させてくださいと言いに行った後、成田先生に言われた通り、夕聖と俺は練習着に着替えて校庭に出た。「先生!」成田先生は校庭の石階段の2段目のところに立っていた。俺らは先生の元へ走って向かった。
「お来たね来たね」言葉は柔らかいのに無表情なのと抑揚がないのとでなんだか、カンペでも棒読みしているかのようだった。「じゃあとりあえず外周10周走って戻っといで」え、と声が出たのは俺だった。わざとでは無い。自然と出てしまったのだ。だってサッカーさせて貰えると思ってたから。驚きを隠せない僕達に先生は、またさっきのロボットみたいな声で「はいはい行った行ったそれが終わったら練習参加させてあげる」と言った。
コースが分からないので1周目は、2年生の先輩が案内してくれたのについて行った。
なんとか外周10周を走り終え、俺と夕聖は先生のもとに急いだ。
「お、思ったより早かったな」そういう先生は俺たちが外周する前とほぼ変わらない場所に立っていた。顎を少し撫でながらうーんと唸る先生に、「練習させて下さい!」ゆったりして、中々発言しない先生を急かすように夕聖はそう言った。
「ははっまいったなー、いいよ。一屋〜!!」先生は、そう大きい声で呼ぶと体格がっしりめなキャプテンマークをビブスの下に着けた人が駆け足でやってきた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2023/12/19 8:35
にこ
『桜が咲かない春』
自分のペースで少しずつ書いていきます。何度も消したり書き直したりしていくと思います。