裏の小川にて

裏の小川にて
 私の家の裏に、小さな小川があった。幼かった私はその小川は大きな川に繋がっていて、やがて海に繋がっているものだと信じて疑わなかったから、いつも駄菓子屋で買ったプラスティックで出来たラムネの小さな小瓶に手紙に一言書いて、願いを込めて流していた。  手紙の内容は子どもらしいどうでも良い事ばかりだった。この手紙を拾ったひとは私に連絡下さい。私のいちばん大切なものをあげます。そんな感じで。  子どもだから、大切なものなんて拾ったビー玉やお母さんからもらった可愛い人形くらいだけれど、大切なものを知らない人にあげれば、知らない人も私に大切なものをくれると勝手に考えていた。  でも、その考えはあさはかであったと後日判明する。  夏休み、誰もいない裏の小川、いつものようにラムネの小瓶に一言書いて流す。小さな小川をゆるゆると流れる小瓶を私は麦わら帽子の鍔を掴みながらそれを見ていた。
枇榔井うみ(ひろい・うみ)
枇榔井うみ(ひろい・うみ)
小説を書く練習をしています。拙い小説なので、合わないと思ったらブロック推奨です。 読んで下さった皆様に感謝します!