くたばった敵

くたばった敵
ブラストがしわくちゃになった新聞紙を広げていると、ドアの方から威勢のいい声が聞こえてきた。 「マグナスの野郎が死んだ! ハレルヤ! ブラヴォ!」 レヴィは両手に酒瓶を抱えながら、どかどかと部屋に入り込んできた。黄ばみかけたシャツに負けないくらいの汚らしい笑みを浮かべ、高揚からか汗をかいている。 誰のことだと聞くと、彼はまたもや声を張り上げる。 「誰かって? あのマグナス・サンハネスだよ! 新聞にも載ってるさ。『あの有名なマグナス・サンハネス氏が、今朝癌に大敗を喫して死亡』だとな。いいかい友よ、あいつは俺の敵だ! そして、これによって俺の敵は、皆くたばって死んだ事になるんだ!」 レヴィの躍動っぷりは凄まじかった。勢いのまま汚い言葉を喚き散らかし、辺りには、祭事にて加減を失った暴徒のような熱気が加わっていた。 「神はいた! 俺がそれなのだ!」 唖然とするブラストをよそに、レヴィは新たなワインを注いだ。高貴な芳醇をぶち壊すように、口へと注いだのだ。もう彼を止められる人間はいない。そんな奴がいるとするなら、そいつは共同墓地とやらである。 「あいつは正真正銘のくそ野郎だった。俺を蹴飛ばして、殺して、財布を締め上げたんだ。数多あった時間はほとんどあいつとの無駄に消えた。そして、賢明なフランカも俺の元を離れ、富豪となったあの男の元に行ったさ。本当に頭の良い奴だったよ! 金があれば愛を磔にしても幸せなんだと気づいていたからな!」
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