「綻び」
初春。風の中に冷気を感じなくなって久しい頃。大きな建物に、制服姿の子どもたちが、入っていく。
「……」
両耳につけられた小さなピアスに、ずしりとした確かな重みを感じる。今日は「国立特別魔法科学園」略して魔法学園の、入学式。私は予定よりも5分ほど早く到着すると、隅々まで磨かれている廊下を通り、五十音順に決められた教室の席についた。誰もいない。数分もすると何人かが教室に入って来る。教室に入ってくる人間の足音は、皆同様に緊張が伝わってくるものだ。その中で、一つだけ他とは違う足音があった。軽快すぎる。しかも、その足音は私の方に近づいてきている気がする。
椅子を引く音。鞄を置く音。わずかな衣擦れの音。背後から聞こえた音のすべてが、私を強張らせていく。石の様に固まってしまった私の内側に、何か違和感を感じた。何よりも近くにいるようで、そこまで近くない。危害を加えてくるわけでもなく、ただの無邪気さのような。自分のものではない何かが体の中にある。無意識のうちに、それを体から押し出すと、後ろで空気が揺れた気がした。
生徒が全員揃い、担任の女教師がホームルームを始める。五十音順に名前が呼ばれていく。
「相田、安藤、石井、」
呼ばれた人は返事をしていく。機械みたいに。
「加藤、金子、香具山、」
香具山、という苗字は多くない。まして魔法学園にいる香具山といえば、思い浮かべる顔は皆同じなのだろう。教室が一瞬畏怖の表情に包まれかける。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2026/2/20 13:47
あい
色んなジャンルに挑戦したいです!温かい目で見守って下さい…。