海鳴り
曇天が海を覆っていた。海育ちでない僕でもわかる。もうすぐ嵐が来るのだ。
でも僕は砂浜に座り込んだまま動けなかった。「かあさん」を置いていくわけにはいかない。僕はかあさんを抱きかかえたまま、荒れる波をぼんやり見つめていた。
「何してんの?」
空模様に似つかわしくない声が上から降ってきて、僕はゆっくり空を仰いだ。背の高い男が覗き込み、僕の顔に影を落とした。僕が何も言わないでいると、彼はかあさんに気づいたようで、
「それ、宝物かなんかか?」
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2022/7/4 1:37
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
絵空こそら
よろしくお願いします。