海鳴り

 曇天が海を覆っていた。海育ちでない僕でもわかる。もうすぐ嵐が来るのだ。  でも僕は砂浜に座り込んだまま動けなかった。「かあさん」を置いていくわけにはいかない。僕はかあさんを抱きかかえたまま、荒れる波をぼんやり見つめていた。 「何してんの?」  空模様に似つかわしくない声が上から降ってきて、僕はゆっくり空を仰いだ。背の高い男が覗き込み、僕の顔に影を落とした。僕が何も言わないでいると、彼はかあさんに気づいたようで、 「それ、宝物かなんかか?」
絵空こそら
絵空こそら
よろしくお願いします。