瀧廉太郎装備

瀧廉太郎装備
 高校生の頃、文芸部に所属していた同級生が、「めがね」という詩を書いた。  ――めがねをしている世界はめまいがする。息がつまる。めがねを外して、ぼんやり涙ぐんだ世界は、やけに美しく見えた。  そんな感じの詩だった。  なぜいま、その詩を思い出したのかというと、わたしはいま、めがねを捜しながら泣いているからだ。  ――いやだよ、見えない、苦しい、焦らせないで、どうして。  コインランドリーの二十五キロのドラム式乾燥機で、全部乾くまでに四十分もかかった皺だらけの洗濯物の山。  ここ三週間ばかり毎日、食べては包みなおし食べては包みなおしと一枚三円するコンビニ各社の袋に臭い漏らさぬようぎゅっと封印してきたおびただしい数の弁当がらや、やる気のないドミノのように無秩序に床に並んだ空き缶とペットボトル。  部屋の汚さに比例してそこらに山積みになった、つまらない感傷。
たけみや もとこ
たけみや もとこ
たけみや もとこです。2000〜5000字くらいの読み切りを中心に載せていきます。ジャンルは何でもありです!