メトロノーム⑥

メトロノーム⑥
−なんで急に過去のことを思い出したのだろう。  光は困惑していた。姉にメトロノームをプレゼントしてから、なんとなく気分が上がらない。  「姉ちゃんは…気づいてるかな」  灯にプレゼントを贈るとき、光はいくつか嘘をついた。  (…父さんと母さんからだよ。)  (もうおつかいは終わったからな。)  これらは嘘。実際は姉のことを気にかけていた光が用意したものだ。  もちろん両親も灯のことを心配していたが、『メトロノームを灯に渡す』というアイデアは思いついていなかった。  “とにかく、これで姉ちゃんに元気出してもらわないと…。”  光は、姉の演奏をもう一度聴きたかった。…いや、一度とは言わず、何度も聴きたかった。
白羽 唯
白羽 唯
ファンタジー小説を主に制作する、小説作家志望です。 まだまだ文章が下手&Novelee初心者なので、温かい目で見てもらえると嬉しいです! 誠に申し訳ないのですが、都合により不定期投稿になります。すみません。