エゾギクの美酒

エゾギクの美酒
序 「ここに霊液があります。あなたの助けになるかもしれません」 差し出された小瓶の中には、粘度を持つ液体が入っていた。至極色のそれは、どこか禍々しくも感じられる。 この中に、俺の欲している物全てが含まれている。 小瓶の中身を振り混ぜながら、その男は内容物を読み上げた。 「聖書の紙片、シェイクスピアが使用したペンのインクを数滴。エゾギクの花束に、亡くなった無名作家の残留思念を浴びるほど。健康上問題はありません。あなたが望むかどうかに全てがかかっています」 「それで、俺は変われるのか」 「もちろん。これを飲めば、一夜にして有名作家として大成するでしょう。デメリットはありません。在庫は残り一つです」
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