風を売る少女

風を売る少女
「やっと着いたか……」  周りを見渡す限り山が連なり、その中でも平坦な集落。そしてどこか懐かしい、でも寂しい……故郷まで続く一本道が伸びていた。  久しぶりに故郷の村に戻った。ある人から聞いていた。 “あの村はもう誰もいない”と。  言われた通り、廃れた集落になっていた。家はボロボロ。畑の雑草は伸び放題。人の気配はなく、あるのはここに昔人が住んでいたという痕跡だけ。  私は悲しくなった。少し前までは賑やかだった故郷がこれほど……、あれ。  私の生きた故郷はどんな姿だったか。  靄がかかったように、うまく思い出せない。  そもそも20年近くぶりに故郷に帰ったことを思い出した。半ば強引に出て行った私は嫌っていた故郷の風景を忘れていた。
花瀬 詩雨
花瀬 詩雨
ハナセ シウと申します。 よろしくお願いします(՞ ܸ. .ܸ՞)︎♡ アイコン ノーコピーライトガール様