異端児其三

 今日一人の人物を紹介したい。名を寛治、姓を柳原という。ここでいう柳原の読み方は「やなぎはら」ではなく「やなぎわら」である。  この男、紛れもなく天才である。何を隠そうこの私、人を見る目にはかなりの自信がある。そんな私が断言するが、今まで見てきた人間の中で文句なしの一番である。僅差で一番になったとか柳原と仲が良いからとかではない。  むしろ私はこの柳原という男のことが嫌いなぐらいである。柳原は天才であるが、人格面、こと人付き合いにおいては最悪である。天才であるが故になんでも一人でこなそうとしており、他者を利用することはあっても頼ることはなく、自分の考えを共有することもない。また、かなり口が悪く、目上の立場の人であろうと容赦なく罵倒する。だからであろうが、悪態をつき上の者には嫌われ下の者には理解されないという悲しき天才でもある。  一方で、後輩にはよく食事をご馳走したり、何か部下の不満があれば積極的に改善していく面もある。特に細かい部分によく気が遣える男で、そういった面では支持されているかもしれない。  しかし、柳原が天才すぎるがために彼の考えがまるで分からない。凡人であればあるほど分からない。加えて行動的であり、一人でなんでも実行してしまう。だが、実行したことの本質的意味は誰にも分からないのだからどうしようもない。  斯くいう私も彼のことを本当の意味で理解できているとは思わない。だが、紛れもなく天才である柳原寛治という男について今日は話したいと思う。  私が彼と出会ったのは四十歳を過ぎたばかりの頃である。私の古くからの友人である森田氏の紹介を受けて出会ったのである。初めて柳原にあった時の印象を話す前に森田氏について少し説明したい。  彼は、資産家の血筋に生まれ、裕福な家庭で成長したことが目に見えてわかるほど品の良い男である。また、彼の代で元々あった莫大な資産は数倍にも膨れ上がった。それは森田氏の商才や人懐っこい性格なども関与しているであろう。  そんな彼だが、誰にも言えない秘密がいくつかある。それは映像品の収集である。これだけならば人に言えないことは一切ないのだが、彼の集めている映像品に少し問題がある。
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色々書いています。