パンドラの二重底

パンドラの二重底
 ある日、冥王プルートはゼウスに尋ねた。 「なぜ、厄災の壺をパンドラに託したんだい? あいつら、自分のしでかした罪の大きさに今も苦しんでるぜ」  すると、ゼウスは頭をかいて答えた。 「サプライズのつもりだったんだがね。若い夫婦には、挫折と目標が必要だ」 「それにしては、代償が大きすぎるだろう」 プルートは重ねて問う。ゼウスは苦笑いを浮かべると 「実はな、あの壺の底には、時を戻す砂が入っているんだよ。彼らが自分の行動の結果から逃げずに、真正面から向き合えば気づく様にしておいたんだが……」 そう言って、葡萄酒の杯を悪戯っぽく揺らして見せた。 「まぁ、彼らがいつ気がつくか、気長に待とうじゃないか。何せ、時間なら退屈するほどあるんだからな」
泥からす
泥からす
短くて、変な小説を書きます。ノンジャンルです。