命に値段を付けるなら
天上の回廊は、静寂と冷ややかさで満ちていた。何ひとつ不変であり、何ひとつ過剰ではないその光の世界で、上位天使ミカエルは与えられた命じを胸に抱き、人間界へと降り立った。
神から下された命令は単純かつ絶対であった。
「人間界へと赴き、指定された数だけの魂を買い取ってまいれ」
神が差し出したのは、銀色に輝く小袋であった。中には数個の透明な対価——天上の概念が詰まっている。ミカエルは人間に扮し、黄昏時の喧噪に包まれた古びた街の路地裏へと向かった。
そこには、死期を目前にした貧しい絵描き、病床の妹を持つ少年、そして誇り高く生きて老いた孤独な哲学者の三人がいた。ミカエルは神の命に従い、彼らに取引を持ちかけた。
「あなたの魂を買い取りに来ました。この対価と引き換えに、残された時間を私に委ねなさい」
絵描きの前で袋を開けると、中から転がり出たのは小さな黄金の硬貨が一枚だった。絵描きの魂の価値は「金貨一枚」。
病床の妹を抱える少年の前で袋を開けると、今度は美しい瑠璃色の宝石がひとつ零れ落ちた。少年の魂の価値は「宝石ひとつ」。
そして老哲学者の前で袋を開けた時、そこにあったのは名もなき白の小石だった。
ミカエルには、その価格の基準がまったく理解できなかった。絵描きの情熱も、妹を想う少年の絶望も、己の終わりを受け入れようとする老人の諦念も、天使の目にはどれも同じように尊く、等しく揺らめく光に見えたからだ。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2026/7/22 11:11
ユート
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ごめんなさい、色々疲れてしばらく投稿止めます、本当にごめんなさい