心の中に

 僕の中学校の文芸部なんて、あってないようなものだ。部員は10人はいるけど、ほとんどが滅多に来ない。顧問は3年生の担任だから忙しくて、部活にかまけている暇がない。  僕は本が好きで、せまい文芸部の部室に来れば、誰にも邪魔されずに本を読む時間が毎日確保できる。家だとなんだかんだスマホを見てしまうから、これは貴重な時間だ。だから誰も来なくても、僕はいつもここに来る。  そう。毎日来るのは僕だけ。  ここにいるはずのない生徒がいても、気づくのは僕だけだ。 「え…なんでここに?」  村雨響(むらさめひびき)。僕と同い年の中学2年生。一度聞いたら忘れられない名前に、一度見たら忘れられないルックスの彼女は、美術部のエースとして知られている。その成績は半端ではなく、中学生にとって最高峰のコンクールで最優秀賞を受賞した。聞くところによると、ピアノも何らかの賞を受賞しているとか。全校集会の表彰式で必ず名前を聞く生徒だ。なんでそんな生徒がごく普通の中学校にいるのか不思議だ。  見ると、彼女はノートに何かを書き殴っている。その気迫は鬼気迫るものがある。あの天才が、とうとう文章にまで手を出したか。外見も良い天才が集中している姿は、なかなか見応えが…いや、その前に返事してくれよ。 「あのー、村雨さん?」 「…ふう」  一息つかれてしまった。村雨さんは涼やかな声で一言、
そら
そら
きままに書きます。