舞う花びらは指をすり抜ける

舞う花びらは指をすり抜ける
 叶うはずなのに届かない。それは、まるで無知な私に、地図だけが渡されたようなもの。浮かれた心に踊らされていた。気づけば、空は淡い桃色から緑、緑から赤に染まりゆくのに、私だけが歩いているつもりになっていた。私は焦っている。いつも通りの生活が、所々騒がしくなってきているのを感じる。不快だ。気分が悪い。無自覚なカクテルパーティ効果の地獄耳が、脳を蝕んで適切な応答を諦めさせる。  じゃあ、それは本当は叶わないのではないのか。地図を手に入れたと思っていたそれは、数百年前のものだったりして。使い物にならない、丸めて投げるか、破いて尻を拭うことくらいしかできない。  そして、いよいよ私がなぜ此処にいるのか、そもそも私は何処にいるのかさえ分からなくなってしまいそうだ。虚像な仮面に笑われて、私は再び踊らされる。今度は不格好に、されるがままのラットへと姿を変えられてしまうのだ。  ああ、素晴らしい世界。淀んだ空気を渦巻く汚らわしい低気圧の中心には、一点、此方を誘おうと、そこだけを明るく感じさせている。辛うじて、杖がなくとも歩くことのできる力が残された私は、足りない血を求めるようにそれに引き摺りこまれる。この生命の本能が正直に働いている感覚は、私にとっては幸せに他ならない。  この世界に感謝した私は、その先で首を吊る。貴方からは見えない、この渦の中で。全てを知った気になって、独りで満足した者から此処に辿り着き、何の悔いも残さずに昇天していく。決して循環はしないのだが、ある一人の視点からは循環しているように思えてしまう。エントロピーは増大する一方だが、それは果たして此処で気づくことはできるのだろうか。もし、ようやく役割を担ったこの翼をしまっていた何かが在ったのだとしたら、その素朴さをも失ってしまうのかもしれない。この世界は、ずっと複雑で、乱れていればいい。私たちは、何も望まなくていい。
いに 水曜
いに 水曜
水曜に何かを載せます。理由はありません。