縁の結べぬ神

縁の結べぬ神
 あの人に逢いたい、この人に逢いたい。逢いたい人がいるなら、逢えない人がいるなら、神様に頼れば良いのでしょう。  引っ越してしまったあの人に、名前も知らないあの人に、死んでしまったあの人に、逢いたいならば頼れば良い。魂を呼ぶ、神様に。  逢いたい人に会うことは、特に現代、苦ではない。徒歩、自転車、車、電車。それらを使って直接会いに行っても良いでしょう。手紙、電話、メールを使って待ち合わせるのも良いでしょう。でもその人と連絡が取れなくなってしまったら、それで引っ越してしまったら、死んでしまったら、頼る人は0ではない最後の神様。それを縁結びとは知らず、何に対してとも考えず、ただただ目を瞑ってお願いするのでしょう。 「お願い神様、あの人に逢わせてください」  神様は慈悲深いから、そのお願いが届いたならばきっと助けてくれるでしょう。街を歩いているとき、お店でご飯を食べているとき、それとも神社でお参りをしているときに、貴方は逢いたい人に逢っている。  逢いたい人に逢えたなら、もうその縁が切れることは無いでしょう。神様が貴方達を守ってくれるから。  もしも逢えなかったと言うのなら、それは貴方のせいなので、神様のせいにしてはならない。逢えているのに、目を逸らしてしまったか、気付いていないだけだから。
月影羽
月影羽
作家志望の学生 好きな作家は芥川龍之介、太宰治、フョードル・D、東真直、夜咄頼麦etc. アイコン→みわしいば様