寿楽荘、曰く憑きにつき〈2〉

寿楽荘、曰く憑きにつき〈2〉
 昨日は一睡も出来ないまま気付けば朝を迎えていた。  洗面台の鏡で顔色を確認してみると、目の下にくっきりと隈が浮かび上がっているのが窺える。 「はあ、これで初出勤とか・・・有り得ねえ」  例のドンチャン騒ぎは結局、明け方の五時過ぎまでたっぷり三時間以上も続いていた。  外は今日も快晴で晴れ晴れとしていると言うのに心の中は仄暗い曇天模様。雨が降る直前の雨雲のようにどんよりと重く、気分は沈んでいく一方だ。  他の住人はあれが気にならないのだろうか?  他の住人どころか、あれなら近隣の住民から苦情が殺到しそうなものだが———と言うよりもいっそ警察を呼ばれてもおかしくないレベルのはず・・・・・・と、そこで柳田ははたと気が付いた。 「警察に通報って手があったじゃん」  失念していた。何たる凡ミス。警察に通報していればそれで万事解決だったのではないか? そう思うと、そんな簡単な事にも気付かずに何時間もただ騒音に怯えていた自分の馬鹿さ加減に苛立ちが募った。  いやいや———自身の考えを否定するように頭を振ると、蛇口から勢い良く捻り出した水を二度、三度と打ち付けるようにして顔を濡らした。
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
皆様初めまして。華月雪兎です🐇 「雪」に「兎」と書いて「ゆと」と申します💡 現在は掌編、SS、短編から中編サイズの小説を書かせて頂いております。 恋愛系短編集 『恋愛模様』 ミステリ/ホラー系短編集 『怪奇蒐集録』 をエブリスタ、Noveleeにて不定期連載中📖🖊