第一話 無免許幽霊

「いっけなーい! 遅刻遅刻ー!」 曲がり角を曲がった途端、ドン! という大きな衝撃音と共に制服姿の少女とぶつかる……と思いきや、俺の身体は少女の身体をすり抜けて行った。 「は?」 「え?」 お互いに困惑する。 よく見てみると、少女の身体は向こう側が見通せるくらいに半透明であり、膝から下の脚が無く、頭には三角形の布のようなものを巻いている。 「アンタ、私が見えちゃってるの?」 「え、あの、幽霊??」 「見りゃわかるでしょ。生身の人間のくせに目ついてないの?」 本物の幽霊に出くわした衝撃よりも、その高圧的な態度に苛立ってしまう。
吉口一人
吉口一人