犬を迎える時は保護犬という選択肢を

犬を迎える時は保護犬という選択肢を
雪が吹雪いている中、たまたま家族と行ったホームセンターで『犬の譲渡会』という文字が輝いて見えた。  私の家族はみんな犬が大好きだったので既に一匹の柴犬を飼っていて、二匹目を迎えることなんてあの時は思いもしなかった。譲渡会会場に行くとたくさんの保護犬が並んでいた。柴犬や雑種の子犬や成犬、可愛い犬たちがこちらをみて、『私たちの家族になって!』と訴えかけるような目をしていた。今までみんなそれぞれ辛い環境で育ってきたためか、心の底から訴えるような目だった。その様子を見て私はとても心を痛めた。  今私に何ができるかを考えた。私の頭にひとつの言葉が浮かんだ。『この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』これは殺処分の現状を描いた本に書かれていた言葉だった。私はその時、この多くいる犬の中で、1匹でも多くの犬を救う手伝いをしたいと思った。まずは、1匹先住犬の『なな』に相性のいい子を我が家の家族の一員にしたいと思い、レスキューされていた2匹の柴犬のどちらかを選ぶことにした。1匹目の女の子はななと相性を確かめると、お互いにそっぽをむいた。お互いに相性が合わないまま、一緒に暮らしても2匹とも幸せになれないと考え、その子は他のお家の家族となった。もう1匹の男の子の柴犬『ちゃ丸』と相性がなかったら、うちとはご縁がなかったから、ななと相性の合う他の子が来るのを待とうということになった。  『おいで!』そう私が言って、ちゃ丸のお気に入りのリードと首輪を見せると寄ってきてくれた。ななのことが大好きなようで、相性を確かめるどころか、2人とも一緒に暮らす気満々だった。2人とも嫌がることもなく、あっという間に時は過ぎ、譲渡会は終了した。もし、我が家の家族になるならば、その日の夜に電話が来ることになっていた。  幸せの鐘がなった。ちゃ丸はうちの家族となったのだ。ちゃ丸に初めて贈るプレゼントはなんだろう。そう考えた時、名前をプレゼントしなくては!と思い、ちゃーちゃんと呼んでいたのでちゃの部分を残し、長男だったので、タローをつけてチャタローという名前をプレゼントした。ななもチャタローもずっとずっと一緒に暮らそううね!そう誓ったが、幸せはすぐに消えてしまった。  ななにがんが再発したのだ。ななは以前にもがんを患っていたが、手術をして腫瘍をとっていた。もう一度手術をするか、それとも痛みを緩和する治療かどちらかを選ぶことになった。ななはまっすぐな目で見つめる。何かを訴えているような目だ。私たちにはななの辛さもなにもわかってあげられない。虚しさが憤る。ななはもう高齢で、手術に体が耐えられるのだろうか。手術の後だって放射線治療や抗がん剤治療とかいろんな辛いことが待ち受けている。私たちがななにできることはなんだろう。そう考えた時、もう苦しませたくない一心で痛みを緩和する治療を選んだ。それからずっとななは亡くなるまで笑顔だった。特にチャタローと一緒にいる時。2人は本当に運命であり、奇跡である出会いを果たし、最高の人生を送っていたのだった。  ななはチャタローと出会ってから10ヶ月で亡くなった。チャタローも私も家族もご飯が喉を通らず、笑顔がなくなっていた。そのとき思ったのだ。私の家は犬でまわっていたのだと。チャタローがあまりにも元気がなくなり、髭が白くなり、毎日ないていたのでお母さんが保護犬を探し、黒柴のクロスケに出会った。それからチャタローは笑顔を取り戻し、現在も元気に過ごしている。  クロスケが家に馴染んだ頃、チャタローを引き取った犬の保護団体を思い出した。あのとき周りにいた犬達は元気なのだろうか。他にも不幸な犬が今同じ時を過ごしているのに、何もしなくていいのか。そう考えて調べると、預かりボランティアというものがあることを知った。預かりボランティアとは、レスキューした保護犬の心の傷をなくしてあげてある程度の躾をし、譲渡会までの道のりをつくるボランティアのことだ。  それなら自分にもできるのではないか。そう思い、預かりボランティアを始めた。預かりボランティアを始めてもうすぐ4年が経つ。現在も我が家で預かりボランティアをしているが、みんな心の傷を抱えているはずなのにいつも笑顔だ。みんな身勝手な人間のせいで命ではなく物のように扱われていたのに…。みんなペットショップの可愛い子犬がいいと思うかもしれない。だか、そのせいで裏では無理やり繁殖犬として働かされる犬がいて、それでも人間を信頼しようとする必死な姿があるのだ。   だから、私はチャタローやなな、預かってきた犬達の思いを届けたい。命を物としてみないでほしい。犬をお店で売らないでほしい。そして、犬や猫を迎えるなら保護犬や保護猫という選択肢があることを知ってほしい。これが今まで私と30数頭の犬達が繋いできた命のリレーだと思う。
天音
天音
中学1年生です。天音といいます。 自分の過去を中心に書いています。 よろしくお願いします。