縁側の座布団

縁側の座布団
祖母が亡くなったあとも、縁側の隅には一枚の座布団が置かれていました。色あせた花柄の古びた布で、父は「おばあちゃんのお気に入りだった」と言って片づけようとしなかったのです。 けれど、私は知っていました。祖母は生前、あの座布団に一度も腰を下ろしたことがなかったということを。 「背中が冷えるんだよ」 そう言って縁側を避け、居間で過ごしていた姿を何度も見ていました。だから、あの場所に遺された座布団はどうしても不自然に思えたのです。 その夏、夜中に廊下を歩くたび、座布団の位置がわずかにずれていることに気がつきました。布地が沈み、誰かが座ったような跡まで残っています。家族は気にも留めていませんでしたが、それでも私の胸の奥には、冷たいものが積もっているのがわかりました。 ある夜、障子の隙間から縁側を覗いてみました。すると、月明かりの下、座布団に女が腰かけていたのです。 長い髪を背に垂らし、白い浴衣のようなものをまとい、静かに庭を見つめている。
虹色のシャボン玉
虹色のシャボン玉
適当に楽しくやってます!! 作品のサムネは全てAI生成によるものです