決意

決意
 じりじりと暑い日が続く。僕はうっすらと額に汗をかき由美の墓に向かっている。木々が生い茂る人気のない山路で、葉の擦れる音が心地よく僕を迎え入れてくれている。まだ少し躊躇っているのか僕はゆっくりと足を進めた。  地面からゆらゆらと陽炎が動いていた。少し歩くと陽炎の向こうから女性が歩いてきた。遠目で見る彼女は由美と同じ背格好をしていた。僕は心の中で不思議と期待が膨らんでいた。由美なのかも知れない。そんなはずないのに。僕は気付けば早足になっていき、だんだん彼女との距離が近づくにつれて、鮮明に彼女の顔が見えてきた。近づいてくるにつれて僕は目を伏せていった。現実を見るのが怖かったのだろう。おそらく由美ではない。僕の中で抱いていた僅かな期待がなくなった瞬間に立ち止まってしまった。先程まで聞こえなくなっていた様々な音が、いっせいに僕に襲いかかってきた。  彼女はだんだんと近づいてきて僕に声をかけてきた。 「こんにちは、暑いですね、お墓参りですか?」 僕は彼女の顔を見ることが出来ず伏目がちに答えた。 「えぇまだ暑い日が続きますね、お墓参りに行く途中です」 少し声が震えてしまったかもしれない。 「きっと嬉しいと思いますよ、何年かぶりに会いにきてくれたら」 そういうと目を伏せている僕の横を通り過ぎて行った。はっとして振り返ると、陽炎だけが残り彼女の姿はなかった。  由美の墓前に立つと目新しい花があることに気づいた。きっと由美の親族の方が置いていったものだろう。僕は花屋さんで見繕ってもらった花束を墓前に置いた。いざ墓前で手を合わせると何を言っていいのか分からなかった。ただ心の中で由美に問いかけた。
テツヤ
テツヤ
初心者🔰です。拙い文章かと思いますが読んで頂けたら嬉しいです。