十三秒の夕日
十五秒の夕日
僕の好きな人が住んでいる街は、田舎くさくて電車の踏切も車が一台通ればいいくらいのしょぼさだ。取り柄と言ったら夕日が綺麗なことくらい。誰もこんな場所に好き好んで住むわけがないと思い僕と一緒に暮らしてくれたら、美味しいものも、綺麗な服も、なんだって与えてあげられるよと、僕は好きな人に告白をした。だけどその人は僕のところには来てくれなかった。「ありがとう、でも好きな人がいる」そう言われてしまった。僕はその人に好きな人がいる事も承知だった。そして、それが叶わない恋だということも知っていた。
それは、出会った日に分かってしまったんだ。
僕は熱で倒れて気付けばその人の家にいた。小さいアパートの一部屋で、今時、裸電球という質素すぎる部屋だった。
その人は編み物を編んでいて、時より振り返って窓の景色を見る。振り返っても工場があるだけで何も風景なんていいものじゃないし、おまけに線路沿いのアパートなおかげで定期的に震度2くらいの揺れを感じなきゃいけない。
そんな環境がいたたまれなくて、僕は救い出したかった。その人に告白を断られた日、僕は項垂れてそのまま部屋に座り込んだ。部屋にある唯一の窓には夕暮れ時だというのに、工場の大扉がガラガラと上に引っ張られていくところで、うるさかった。
「何を見ているの?」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/5/28 9:22
月雫しわす
創作の世界で色々なBL物語を作っています。
各、キャラクター目線の詞や
小説っぽいものも、書いていきたいです。
普段はイラストを描いています。