透明なバスケットボール

透明なバスケットボール
夜の体育館は、世界から切り離されたみたいに静かだった。 風の音も、街のざわめきも届かない。 ただ、ボールが床を叩く音だけが響く。 ——ドン、ドン。 反響が広がって、胸の奥まで揺れる。 澪は息を吐きながら、ひとりでシュートを放った。 ボールがリングを擦り、軽い音を立てて落ちる。
かつらな
かつらな
現役女子高生、17歳。 かすかな痛みと夢の残り香を言葉に変えて、生きている証を綴る。