角を隠す

 鐘が鳴る時はいつも誰かが死んでいた。  鳴らせるのだから時鐘として使えたはずなのだけれど、うちの教会堂では特別な時以外は鳴らさなかった。加えて、どういうわけか、結婚式はそこではほとんど行われなかった。  だから、鳴る時はいつも弔鐘だった。ここでなら土葬にできたので、火葬を忌む人たちに求められたのだ。  幼い時、夏になると外では帽子を乗せられた。白い鍔広の帽子は、すぐに風で煽られるので面倒だった。  それでも、都合は良かった。頭に生えた感触に、気を遣わなくても済んだからだ。  私の頭には角がある。  目には見えず、鏡にも映らない。他人にも見えないらしい。けれど、自分の皮から離れた場所に確かな感触があって、額に程近いところに生えたそれは、角としか言いようがなかった。  それをどう伝えていいかわからず、言葉を覚えるたび失望が強まった。伝えるのを諦めた私は、頭に触れられることを避けるための口実をいつも探していた。
アムセット