角を隠す
鐘が鳴る時はいつも誰かが死んでいた。
鳴らせるのだから時鐘として使えたはずなのだけれど、うちの教会堂では特別な時以外は鳴らさなかった。加えて、どういうわけか、結婚式はそこではほとんど行われなかった。
だから、鳴る時はいつも弔鐘だった。ここでなら土葬にできたので、火葬を忌む人たちに求められたのだ。
幼い時、夏になると外では帽子を乗せられた。白い鍔広の帽子は、すぐに風で煽られるので面倒だった。
それでも、都合は良かった。頭に生えた感触に、気を遣わなくても済んだからだ。
私の頭には角がある。
目には見えず、鏡にも映らない。他人にも見えないらしい。けれど、自分の皮から離れた場所に確かな感触があって、額に程近いところに生えたそれは、角としか言いようがなかった。
それをどう伝えていいかわからず、言葉を覚えるたび失望が強まった。伝えるのを諦めた私は、頭に触れられることを避けるための口実をいつも探していた。
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2022/7/26 8:00
アムセット