「第7回N1」思い出
「おばあちゃん、死んだら風になろうかしら」
山の麓にそっと存在するおばあちゃんの家、その庭。小さな畑の中でおばあちゃんは突然言った。私のおばあちゃんはもしもの話をするのが大好きだった。そして大体、突然にものを言う。
「それじゃあ、私白いワンピース着るからね。そしたらおばあちゃん、私の裾をそっと撫でてくれる?」
私がそう返すと、真っ赤に色付いたトマトを枝から掬いながら、おばあちゃんは笑って頷いた。
夏休みになるとこうしておばあちゃんの家を訪れるのが私の習慣だ。それは今年、私が高校一年生になるまで毎年続いている。おばあちゃんの家は私が住む都会のアパートとは違い緑に包まれている。我が家とは違う安心がそこにはあった。
私はおばあちゃんが大好きだった。あったかくて、優しくて、陽だまりのようで。きっと他のどんな人からも受け取れないような全てを私は感じていた。
「おばあちゃん、これ、どうするの?」
家に入り、私はおばあちゃんに声を掛ける。机の上では、先ほどまで二人で黙々と収穫したトマトが籠いっぱいに溢れている。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/8/13 7:47
最終編集日時: 2025/8/14 4:45
ひるがお
見つけてくれてありがとうございます。
【投稿予定】
桃に見る彼方