燃える自転車

燃える自転車
自殺に失敗した帰り、マンションの駐車場で自転車が燃えていた。私のじゃないし、知り合いのでもないと思う。 小さい頃から火が好きだった。つい先まで存在していたモノが存在しないモノになる過程を見ることができるからだ。幼少期からマッチでよく遊んで母に叱られていた。 やがて人が集まり、火は消えた。 自転車は黒ずんで原型を留めていない。 その自転車だったモノも数分後には綺麗さっぱり無くなり、人も居なくなり、見慣れた静かな駐車場へと姿を戻した。 その一部始終を私はずっと見ていた。 自室に戻り、私は燃えていた自転車を想いながら自慰行為をした。その後、野菜炒めを作って風呂に入って髪は乾かさずに寝た。明日の自分に怒られそうだ。
渡利
渡利