空底(からそこ)の砂時計
彼女の部屋には、古い砂時計がひとつあった。
底が欠けている。
誰がどう見ても「壊れている」としか思えないそれを、彼女は大切に棚の上へ飾っていた。
砂は、落ち続けている。
止まることなく、流れ落ちて、下にたまることはない。
それなのに、彼女はその砂の流れを、毎晩じっと見つめていた。
「どうして、そんなもの見てるの?」と友人に聞かれたとき、彼女は少し笑って言った。
「うまく言えないけど、安心するの。落ちていくのに、なくならないから」
0
閲覧数: 24
文字数: 747
カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/11/13 8:34
三秋 うらら