#1
私は本来ならば、生きていてはいけない存在だった。しかしながら、彼との約束で私は、今の今まで生かされていた。
「もうすぐ…、あの人の所に行けるのね。」
白内障になり、もはや何も見えない目で、天井を見つめる。周りから、息子夫婦や孫たちの声が聞こえる。皆、わざわざ心配をして、集まってくれたのだ。
「きっと、父さんも待ってるよ。でも、もう少しゆっくりしていきな。」
このゴツゴツした手は、息子の正樹だろうか。手が震えている。
「もう、大丈夫。心残りはないよ。」
目を閉じると、光が消えた。目の前に暗闇が広がり、頭の中に過去の情報だけが駆け巡る。可愛い息子の正樹、気の利く嫁の理恵さん、目に入れても痛くない程愛した孫の奈緒。伴侶の正雄。ずっと恋焦がれていた博さん。
「あぁ、嬉しい。」
私はそれきり、目を覚まさなかった。
母さんが死んで、一週間が立った。胸にぽっかりと、穴が空いている感覚がある。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2023/3/7 6:52
最終編集日時: 2023/3/9 1:37
まる
学生です。
思いついたのを文章化しているので、内容は浅いです。
マイペースに投稿するつもりなので、よろしくお願いします!