#1

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私は本来ならば、生きていてはいけない存在だった。しかしながら、彼との約束で私は、今の今まで生かされていた。 「もうすぐ…、あの人の所に行けるのね。」 白内障になり、もはや何も見えない目で、天井を見つめる。周りから、息子夫婦や孫たちの声が聞こえる。皆、わざわざ心配をして、集まってくれたのだ。 「きっと、父さんも待ってるよ。でも、もう少しゆっくりしていきな。」 このゴツゴツした手は、息子の正樹だろうか。手が震えている。 「もう、大丈夫。心残りはないよ。」 目を閉じると、光が消えた。目の前に暗闇が広がり、頭の中に過去の情報だけが駆け巡る。可愛い息子の正樹、気の利く嫁の理恵さん、目に入れても痛くない程愛した孫の奈緒。伴侶の正雄。ずっと恋焦がれていた博さん。 「あぁ、嬉しい。」 私はそれきり、目を覚まさなかった。 母さんが死んで、一週間が立った。胸にぽっかりと、穴が空いている感覚がある。
まる
まる
学生です。 思いついたのを文章化しているので、内容は浅いです。 マイペースに投稿するつもりなので、よろしくお願いします!