屍ノ踊リ1話

1話「屍蝙蝠」 世間では世紀末と言われた1999年は去り、人々は新しい2000年を無事に迎えた。平穏な生活がいつまでも続いてほしいと願うのは誰でもきっと同じだろう。だが……現実はそう上手くはいかない。 帰宅して「ただいま」と声をかけてまさか返事が返ってくるとは思わなかった。玄関に入った私は今閉めたばかりのドアを開けて外に飛び出そうとするが、手ががたがたと震えて上手く開けられない。廊下の奥に背の高い黒い服の男が1人、夕暮れに伸びた影のように立っていた。 「……お帰り瑠花(るか)。今日は早かったんだね」 「お父さん……なんで。だってあの時死んだはずじゃ」 瑠花が震える声のままそう言うと自らの父親であった男……尸和己(かばねかずみ)がにやりと笑みを浮かべると長い犬歯がむき出される。
羊原ユウ
羊原ユウ
ホラーと特撮ものが好き noteを中心にネオページ、カクヨム、アルファポリスさんなど多数の投稿サイトで活動中