第14話「水際のラヴ・コール」
われらがこの瀬鳥町もその季節は夏季に入り、早くもはや七月の上旬。青鴬高校には今年も、はれてプール開きの時期がやってきたのだった。俺と康二達のクラスは今、本日四時限目の、水泳の授業を行っている最中である。クラスの男女が各グループへと分かれて、それぞれで様々な水泳遊技の種目の実習を夏特有の肌を刺すような熱い陽射しに照らされながら、一人一人の生徒達が披露していた。今泳ぎを行なっているのは女子のグループで、プールの浴槽の中には、意気揚々と泳ぎや息継ぎに勤しんだり、その手の出番を待って立ち話をしているクラスメイトの女子達がワイワイとはしゃいでいるのが見渡せた。花菜も、順番待ちの列の中で、泳ぎに入る準備をしていた。水中用のスポーツウェアを着用した体育授業の担当教師が、ホイッスルを鳴らして女子達への合図指示を送りながら、手元に抱える評価ボードに採点の記入を行っていた。一方、プールサイドでは、そんな女子達の遊技が終わって次の順番が来るのを待っている、俺と康二含めクラスメイトの男子生徒達がダラダラと座ったり立ったりして、目の前を泳いでいる女子達の誰それがお前は好きなんだろ?とか、昨日TVでやってたあれ観たか?とか、そんな他愛もない、高校生らしい会話を各々喋り明かしている。そしてそれは、なるべく陽の当たらない(周りから見れば、文芸部という名の通りの、インドア的な、もしくはノンコミュ的なイメージにそぐわっている故の、調和的な行動にあるいは見えるのかもしれないけど)更衣室の直結する、屋根下の水捌けタイルの床の上に座りながら駄弁っている俺と康二もまた然りであり、俺と康二も時々声高な女子達のはしゃぎに目線を向けたりなんかしては、その合間にこれまた他愛ないにも程がある脈絡のない会話を時間潰しに喋りあっているのだった。
「……なあ、ヒロ」
「なんだよ?」
俺が尋ねると、康二はそう呟いた限り、チラリ、と女子達の並ぶプールの方向に目をやる。
「……彼女の水着姿が眺められるって、どんな気分なんだ?」
「え?」
「自分の彼女の水着姿が眺められるのって、どんな気分なのかって聞いてるんだ」
俺はその康二の、瞬く間のテンションの下がり落ち込み具合に、少し困惑して彼の顔を覗き込みながら言う。
「彼女の、って、何なんだよ」
「だから、ハナのことに決まってるだろって、そりゃお前」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2026/3/23 16:04
最終編集日時: 2026/3/24 7:36
阿部野ケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)