逆行電車

(何してんだよ……俺……)  魔が差した。そう言う他になかった。  前日に遅くまで嫌いな上司に飲みに連れまわされていたり、二日酔いで頭が痛くて寝起きが最悪だった事がこんな事をした動機にはなるが、しても良い正当な理由にはならない。  いつもより空いた車内では、次に向かう駅のアナウンスが鳴り響く。すれ違う向かいの電車には座る場所もなく、これでもかと詰められた人の群れ。本来なら自分が向かう都心行きの電車だった。  また駅に停車した。  今ならまだ間に合う。行け、ほら早く。  逡巡している間に電車の扉は無慈悲に閉まり、行くべき場所からまた遠ざかる。
空人