命奪う前に、心奪いました。~番外編~

 最初に殺した相手は父親だった。  普段は至って普通の父親に見えて、至極面倒くさい親父だった。  何でも俺やお袋のせいにして、何かあれば俺達を見下し、かと言って自分は特に何も秀でたものなどなく。  都合が悪くなれば暴言と暴力を振るう、絵に描いたような田舎の団塊の世代の男だった。  ある日、父と母が大喧嘩していた。  いつもと同じ、母を見下し罵倒し、自分のミスは一切認めず、母のせいにして。  幼い頃からそんな親父の馬鹿さ加減に辟易していた俺は、母を助けるつもりで口を挟んだ。 「何でもお袋のせい、ってことなら、親父は風呂に入るのもトイレも全部お袋に世話してもらってるってのか? そんな元気に喚いて歩き回ってるのに不思議だな?」  すると父は案の定俺を殴った。
和菜
和菜
「小説家になろう」で小説を書いてます。 誰かの目に止まったらいいなぁ……