わたしたちは、空。空は、海をかける。

 最終章 わたしたちは、空。       海は、空をかける。  それから五年の時が経った。  春の海沿い、風がやさしく吹いている。  かつて遥と歩いた道を、僕は今日もひとりで歩く。  でも――もう、「ひとり」ではない気がしていた。  僕は今、言葉を紡ぐ仕事をしている。  大学で詩や表現を学び、出版社で編集をしながら、自分でも詩集を出すようになった。  最初の詩集のタイトルは、彼女がくれた言葉だった。
三秋 うらら
三秋 うらら