息もできない
彼女を攫った。だけど女が女を攫っても、彼女の狭い世界では問題にならないようだった。
両親も、友人も、職場の同僚も彼女の行方を探していないようだった。
今日で5日たった。最初は車で南へ向かった。そこから船で別の島へ渡った。
港から山に入って、小さな町を通り過ぎて、山を歩いて、また海が見えた。
彼女は2日ほど前にけがをして、熱が出ていた。だんだん弱っていくようだった。
夜になって、捨てられたバスタブを見つけて、一緒に入った。
ふちがひび割れていて、土埃が完全に拭えなったけど、夜の空気から少しでも体を守りたかった。彼女はぐったりと私にもたれかかって、目を閉じた。
人生なんてゴミみたい、と彼女はつぶやいた。私は自分の頭に手を伸ばして髪を引っ張る。
今朝生理がきた。そのことが私を一層疲れてみじめな気分にさせた。
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カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2025/6/1 9:26
Mari.A