゜す

 僕の名前は「お」。五十音のトップに君臨する明朝体、「あ」の二画目に惑わされし活字である。  あの艶かしい曲線が美しくも性的だ。  僕の三画目の不格好で短い点で、何度自分の二画目を曲げようと思ったか。  だけど、僕の軸は硬いから毎日柔軟体操をしても効果はなかった。  僕が「あ」を恋慕って千年以上経過した。  長い時間を「あ」とともに過ごしてきたから僕は知っている。  「あ」が「め」に恋をしている、ということを。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
雰囲気小説を書く人です。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 現在は主に「書く」「書く習慣」にて生息しております。 2025/8/16〜 ※無断転載、AI学習禁止