荒廃した世界で貴方と 壱

目を覚ます。 私の部屋だ。 また、今日が来てしまった。 デジタル時計に表示された数字を見て、呆れたようにため息をつく。 七月三十二日。八時二十七分。 夏なのに暑苦しいわけでもなくて、かといって寒いわけでもない。うまく説明するのは難しいけど、強いて言うなら温度がないという感じだろうか。 窓の外に目をやる。 日付としては夏なのに、白い雪のようなものがちらついていた。 まぁ、実際には雪のみたいにロマンチックなものなんかじゃなくて、気管に入れば猛毒に過ぎない、ただのカビの類いなんだけど。 何度あれを吸い込んだことか。
一ノ瀬奏
一ノ瀬奏
いちのせ かなで(Ichinose Kanade)と申します。 創作の源泉は教室に響く乾いたチョークの音とどこか遠くから聞こえる先生の声。 そんな贅沢なBGMを拵えて、本来「有意義」と言われるべきだった時間に「無意味」をつらりと重ねること、それが私にとって何よりの至福でございます。 私の奏でる不協和音が退屈極まりない日常に、「ふっ」と鼻を鳴らして笑ってしまう、どこか間の抜けていて、でも確かにそこにある「ズレ」をお届けできれば幸いです。 もっとも、私の旋律が顔も名前も知らない貴方のお耳に馴染むかどうかは保証致しかねますが。