第8回N 1 “運命”
夕方の校庭は、夏の匂いをまとっていた。部活の声が遠くで弾け、風が草を揺らす音が教室まで届く。
僕――高瀬悠斗は、開け放った窓辺に立ち、その音を聞いていた。
教室にはもうひとりだけ残っていた。
幼馴染の宮良咲也。
女の子みたいに顔立ちが整っていて、声も柔らかくて、困ったように笑うのがクセ。
昔からずっと一緒で、家も隣。小学校も中学も高校も同じだった。
でも少し前から、咲也は学校にあまり来られなくなっていた。今日も保健室帰りに寄っただけだ。
「悠斗、まだ帰らないの?」
「咲也は?」
咲也は笑う。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/12/9 22:38
叶夢 衣緒。/海月様の猫
綺麗事が救いにならない夜の話。
正しさに置いていかれた感情と、
救われなかった青春の残骸。
優しい言葉ほど、いちばん痛い。
2023年
2月27日start
3月3日初投稿