面忘れ
ある日の授業中、ずっと感じていた違和感の正体に気がついた。
クラスの誰かが足りないのだ。
だけど、どんなに考えてみても、足りないのが誰なのか、そいつがどんな奴だったのか、まるで思い出せない。
休み時間に、前の席の友人に話してみたら、彼もまったく同じだと言う。
二人して記憶の片隅に残る断片を必死に寄せ集めてみたが、結果は変わらなかった。
「なんにせよ、影の薄い奴だよな」
諦めた俺は、そう言って椅子にもたれて笑ったが、期待した友人からの返答がない。
見ると、彼はいつの間にか能面の様な表情で、黙って俺を見つめていた。
途端に、不気味な悪寒が背筋を這い上がるのを感じる。
思わず「なんだよ」と口走った俺に、友人は抑揚の欠けた声で、しかし確かに、はっきりとこう言ったのだ。
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カテゴリー: ホラー
投稿日時: 2022/7/18 13:40
泥からす
短くて、変な小説を書きます。ノンジャンルです。