宇宙から降る星

宇宙から降る星
 筑波山の麓に住んでいた頃、わたしの目の前に星が降ってきた事がある。  わたしが住んでいた家はものすごい森の中で、庭にはよく野生の雉が遊んでいた。雉はこーんといった感じに高い声で鳴くから、庭にあるいちご畑で赤くて小さなバケツをぶらぶら持って夢中でいちご摘みをしているわたしの背後で突然鳴かれると、びっくりして『わあ』って声を上げてよく転んでしまった。恐らくわたしは三歳くらいだったと思う。 「雉くらいでそんなに驚かないの!」  母はそう言っていたけれど、幼いわたしには野生の雉は体が大きく、のっしのっしと歩くあれは紛れもない恐竜だった。そんな田舎だから夜になると家の周りは暗闇と静寂に包まれる。大きな道も無い森の中の一軒家、そこには車の走る音も人の話し声も聞こえない。その静寂と暗闇を母は天然のプラネタリウムと呼んでいた。そして晴れた夜は決まってわたしの小さな体を庭にぽーんと放り出し、今夜もお星様見ようねと掬うようにわたしを抱き上げ強引に夜空を見上げるように仕向けるのだ。  夜空を見上げる、これマジでこわいの!  母は何時間も見ていたら沢山星が落ちてくるのが見えるし、人工衛星? が軌道を通るのも分かるし、筑波山によく出没するUFOに会えちゃうかも! なんて脳天気な事言ってるからこいつは正気なのか⁉︎ と心の中で母にツッコミを入れたけれど、幼いわたしは母の決定に従うしかなく、仕方なく母の腕の中から夜空を見上げた。  春の筑波山麓は無茶苦茶寒い。
枇榔井うみ(ひろい・うみ)
枇榔井うみ(ひろい・うみ)
小説を書く練習をしています。拙い小説なので、合わないと思ったらブロック推奨です。 読んで下さった皆様に感謝します!