鳴らした音の行く先は 6-5

鳴らした音の行く先は 6-5
第六章五話 引き裂かれた想い  たどり着いたのは、小さな個室だった。それこそ、施設職員と二人で会話をするときに使う部屋。 「あのな、本当は俺から言うべきじゃないことなんだ」  その一言にどうしても最悪な事態を想像してしまう。 「施設長は、もうこの施設には来ない。入院が決まってから、辞めたんだ。颯に聞かれたときは、貧血だって答えたけどな、きっと本当はもっと重い病気だったんだと思う」  息ができなくなる。だって、あんなにそばにいたのに全く気づけなかった。 「でも…」  必死に声を絞り出す。 「病院の受付の人に聞いたら、退院したって……だから、もう大丈夫なんだよね…」
傘と長靴
傘と長靴
 自分の書いた物語を誰かと共有したいと思い始めました。  拙い文章ですが、目に留めていただけると、幸いです。