消えないシャボン玉

 シャボン玉の中に上下逆さまの世界が映る。透明な膜を一枚隔てた先に笑う君がいた。 「シャボン玉なんて子供の時以来だわ。」  君は緑色のパイプに液をつけて、胸いっぱいの息を優しく吹き込む。   咲き誇った桜を反射するきれいな丸。時々連結して複雑な形を作る。  満足そうに笑う君。僕はその笑顔に惚れていた。知らない間に。  60年の月日が流れて、君は今病室のベッドに横たわっている。  しわしわの手に、掠れた声、白銀の髪の毛。  僕らは多くの時間をともにした。
カシミヤ
気ままに投稿する大学生です。授業の合間と休みのタイミングを見計らって投稿します。皆様も好きなタイミングで読んでいただければと思います。リクエストあればいつでも大歓迎です。