葬儀屋

 私は葬儀屋だ。  葬儀会場は一番天国に近い場所にある。  山脈に食い込むように石を積み上げられた高い塔がそれだ。いつから建てられたかわからないけれど、私のひいおじいさんのさらにひいおじいさん……もっとひいひいおじいさんの頃から塔はあったらしい。古いから今ではすっかり、どこから来たのか花が咲いている。  風通しも良くて、天に近い冷たい風が私の体を撫でていくのが、いつも好きである。  実は言うと塔の下に私は行ったことがない。きっとそこには螺旋の階段があって、そこから死者を連れてくるのだろう。お父さんもおじいさんも行ったことがないけど、おそらくそうだなのだと教えてくれた。  その日、木の上で休んでいると、死の匂いがした。私たち葬儀屋の仕事の始まりを告げる匂いだ。  塔の上に急げば、塔の下からたくさんの人が現れた。  葬儀はいつも塔の上で行われるのが慣わしだ。円形の中央に彼らは集まって、ギラギラとひかる何かを振り回し、歌を歌い、そして涙をこぼして帰っていく。
本条凛子
本条凛子
少しずつ小説を書いています。 載せる予定だった小説の草稿がどっか行って泣いた