第二章

第二章
 ハルキは翌日も、庭から周辺に広がる一帯が丘状の森林の中へと、いつものように狩猟へと出掛けた。今日の目的は、新しく毛皮のマフラーをつくる為の、良い素材になりそうな大きめの羽を持つ鳥なんかを獲りに行くことだった。今日も同じように、ハルキは猪革製のコートに、同じく猪革製のパンツ(こっちは子猪の生皮からつくったもの)と厚底の黒い冬用のブーツを履いて、ライフルを背中に山の中へと登っていった。空は昨晩の吹き荒れる吹雪の一様が、まるで嘘だったかのように晴れ渡っていて、雲ひとつなく白く、太陽の光を燦々と地上に差し込ませていた。そして今日も同じように、ハルキは猪革製のコートに、同じく猪革製のパンツ(こっちは子猪の生皮からつくったもの)と厚底の黒い冬用のブーツを履いて、ライフルを背中に山の中へと登っていった。空は昨晩の吹き荒れる吹雪の一様が、まるで嘘だったかのように晴れ渡っていて、雲ひとつなく白く、太陽の光を燦々と地上に差し込ませていた。  森の中に入ると、緑の茂る草木、枯れ果てた草木の枝先からは、今朝の陽光によって溶解した雪の産物である冷たい水滴が、ぽたりぽたりとあらゆる幹の元で落ち続けていた。それらは時々、その下を通るハルキの被るフードコートの頭上に落ちたりして、彼の着ている厚手の防寒具や背中の光沢を魅せるライフルの様式を静かに濡らしていくのだった。  山道の昨日よりも数十メートル程度の深い場所へ着くと、ハルキはコートのポケットから取り出した、小型の双眼鏡を目元に掲げて、レンズの中を覗いた。鬱蒼と茂る木先の合間から、空の様子を眺める。いつどこから、目当ての鳥達が姿を表しても見逃すことがなくて良いように、そしてその彼等が姿を現す兆候を一瞬たりとも見誤らないようにという、ハルキのこの数年で培われた野生的技量と心理推察が成せるべくして成せる行為だった。  その場所でしばらくそうやってほとんど同じ体制で、小さな双眼鏡の繊細なレンズから覗ける緑の隙間にある空一帯を観察していると、ハルキは瞬間、目を光らせた。彼の野生の勘が働いて、数秒後に右手の方から二、三匹ほどの鳥の群れが現れるのを悟った。そしてハルキは双眼鏡を急ぎ様にポケットに仕舞い戻すと、すぐに背中のライフルを構えて、その銃口を間もなく頭上を通過すると思われる数匹の鳥達の予測飛行地点に向けて、狙いを定めた。そして、その彼の予想通りに、三匹の鳥が羽を羽ばたかせて、彼の頭上に姿を表した。今だ!とハルキは胸で叫んで、迷いなく引き金を引いた。発射された火薬弾が、森の中で轟音を響かせる。そしてその刹那、銃弾の残響の中で、空からは一匹の鳥が体勢を崩して、彼の立つ付近へと落下していく。ハルキは続け様に、他の二匹の身体へも、銃弾を加えた。彼の射撃の命中率は、ほとんど百発百中だった。その成果に、二匹の鳥も、初めの一匹に続いて、木々の中へと墜落した。ハルキの構えるライフルは、今日も硝煙を立ち昇らせていた。  ハルキはすぐにその三匹の鳥達の元へと近寄っていくと、まず先に、彼等の羽に穴が貫通したり、また傷跡が残っていたりしないかなどを確かめた。何故なら、ハルキがこの鳥達の身体からマフラーをつくる際には、彼等の持つ巨きな白い羽が重要不可欠なのであり、その貴重な素材を傷つけるようなことは、マフラーづくりにおいては致命的とも思えることだった。 「やったぜ、思った通りの大収穫だ」  そう言ってハルキは早速その撃ち落とした白い羽の鳥達を一度に抱えると、大事そうに羽のあたりに力を込めぬように気をつけながら、山道を戻り歩いた。 「いやあー、ほんと今日あたりはなんか、鳥とかを狩るのに似合っている天気だと思ってたんだよな」  ハルキは上機嫌で浮き足立って、満足そうな笑みで雪道の丘を下っていく。すると、鳥とは別の、他の動物のものの気配が、斜め横方向のあたりからこちらに感じたのを覚えて、ハルキは思わずその方向を見やった。そこには足元から膝上くらいまでの雑草が茂っている群生が広がっていて、それらはやはり溶けかけた雪で白く埋められていた。果たしてそこに隠れていたのは、ーーとはいっても、距離的にみれば、ハルキの元からは、十メートルは離れているであろうという位置のあたりではあったのだけれどーー黒い毛の、一匹の見慣れぬ猫の姿だった。その猫は、ハルキが目をやってから数秒と経たずに、彼の方をふと見つめると、すぐにその姿を消し去るように森の奥へと這い歩いて行ってしまった。 「……なんなんだ?あの猫」
阿部野ケイスケ
阿部野ケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)